平成29年 鶴岡八幡宮献茶式
6月17日、青空の下多くの参拝客でにぎわう鎌倉鶴岡八幡宮で、家元奉仕による献茶式が執り行われました。
献茶式は、午前11時より、八幡宮の厳かな御社殿で、不徹斎宗匠による濃茶、宗屋若宗匠による薄茶が点てられ、神前に献じられました。
鶴岡八幡宮の御本殿は、文政11年(1828)、江戸幕府11代将軍徳川家斉の造営による代表的な江戸建築で、若宮とともに国の重要文化財に指定されています。
副席の濃茶席は、小林徹信先生が担当されました。(於 安房席)
床には、幕末期七卿落ちの一人として維新に際して勲功があり、明治天皇の和歌師範でもあった三条西季知の夏日同詠寄夏祝言和歌が掛けられ、手付籠に東慶寺夏椿と縞葦。
東慶寺夏椿は花弁の1枚に紅が差し、一日だけのはかない花です。香合は鎌倉彫具利。点前座には、尼面鐶付の風炉に牛童文鐶付笛の四方釜。瑞々しい青竹の風炉先。深い色の黄瀬戸の葡萄文水指に直斎好みの梅棚。中国唐朝に仕えた名将「郭子儀」の銘が付けられた背高の瀬戸茶入。茶杓は以心斎作「早苗」。松江風流堂の水面に光が反射しているお菓子を目でも楽しんだ後、斗々屋や瀬戸黒の茶碗で、これも松江から取り寄せた甘みも感じる香りふくよかな濃茶を頂きました。
薄茶席は扇美会が担当されました。(於 洒心亭)
床には有隣斎一行「山水有清音」。
唐物写の手付籠には、夏の花々が清らかに入れられていました。
香合は琳派「木樵」蒔絵。
点前座には鬼面風炉に切合せの釜。水指にエミール・ガレの蓮池紋。日本の伝統文化 茶の湯に西洋の物を取り込んでしまう巧み。光によって表情が変わるそうです。棚は愈好斎好 澤瀉棚。
茶器は青漆一閑張雲錦絵。茶杓は有隣斎作銘「若みどり」。
中国の儒学者周敦頤が蓮の花のすがすがしさを讃えて詠んだ「愛蓮説の詩」の染付の蓋置は、小さくても存在感がありました。茶碗は唐津「日本晴」、替有隣斎好波に青楓の絵。伝統銘菓の蒸し羊羹「上りようかん」で美味しく薄茶をいただきました。
嬉しいことにお家元と同席することができ、和やかな雰囲気の中で、お家元や赤羽根先生から、以心斎好みの独楽透の莨盆で席中での莨の吸い方等々、道具についての興味深いお話を伺うことができました。茶席の会話に心が躍りました。
この夏、Eテレで武者小路千家の茶の湯が放送され、扇美会の方々が出演されるそうです。
常陸席での点心席では、とうもろこしの炊き込みご飯、青梅の甘露煮、さつまいもなど夏の食材を生かしたお弁当を頂きました。
梅雨の晴れ間、夏日の暑い一日でしたが、深い杜の緑と鮮やかな御社殿の朱色が調和する境内で武者小路千家のお茶を楽しむことができ、満ち足りた気分で帰途につきました。
記録者 長登 幸子
会 記
主 鎌倉扇美会
床 有隣斎一行 山水有清音
花入 時代 唐物写 手付
花 季の物
香合 琳派 木樵蒔絵 雅峯造
釜 切合せ 沙村造
風炉 唐銅 鬼面 沙村造
先 市松紋
水指 エミール・ガレ 蓮池紋
棚 愈好斎好 沢潟棚 小兵衛造
茶器 青漆 一閑張 雲錦絵 春斎造
茶碗 唐津 銘日本晴 無庵造
替 有隣斎好 波に蒼楓の絵 香斎造
茶杓 有隣斎作 銘若みどり
蓋置 染付 愛蓮説の詩 桐山造
建水 唐銅 伝来形 えふご 清右衛門造
菓子 上りようかん 松華堂製
器 黄交趾 喜の字 食嚨 妙全造
莨盆 以心斎好 独楽透 愈好斎在判 木屑造
以 上